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映画『インセプション』より 会話のカット繋ぎ

会話する二人の人物を交互に映すだけのシンプルに見えるシーンでも、構図を分析してみると、さり気ない工夫が見えてきます。

 

今回の構図研究は、映画『インセプション』の1時間21分あたり、男と女が会話するシーンの2カットです。

男が女に対し、苦しみを払拭しきれていない過去の悲しい出来事について告白する、という状況です。

男の後ろは真っ暗で、抜けの悪い背景になっています。過去の出来事へのとらわれ・罪悪感を象徴しているかのようですね。

対照的に、女の後ろには広い窓があり、光が入った抜けの良い背景です。男の話を受け止め、過去に立ち向かうよう促すエネルギーを感じます。

また、二つのカットを重ね合わせてみると、眉間の位置がきれいに重なります。

きちんと話を聞き入れている、受け止めている場面だからですね。

この後、女は過去に向き合うよう言うのですが、男は踏ん切りをつけきれないまま会話が打ち切られます。

女はほんの少し顔を上げ、男はうなだれるので、画面上においても眉間の位置がズレます。

 

 

人物の心情や関係性(脚本)、少しの顔の動き(演技)、それを画面上にどうおさめて繋いでいるか(演出)、いろいろな要素が生み出す意味がしっかり噛み合ったとき、なにげない会話シーンにも説得力が生まれてくるんですね。

 

お話的にも映像的にも、『インセプション』とても面白かったです。他人の夢の中に潜入して秘密を盗むことのできる犯罪者の話。イケてるおじ様たちがたくさん出てきたのもよかった。これまたアマゾンプライムビデオにありますので気になった方は見てみてくださいね。